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ギターの湿度管理について

毎年冬になるとギターが変形したり,指板にひびが入ったりという相談が多くなります。その原因の一つはユーザー様の湿度に関する知識が少し欠けている事なのです。


絶対湿度と相対湿度をご存知ない方が多いと感じられますので、ここでご紹介いたします。楽器の管理にはこの概念がどうしても必要になります。

特別難しいわけではないので、ぜひギターファンの皆様には持って頂きたい知識です。


まずは乾燥し過ぎるとどんな症状が出るかご覧くださいませ。



ブリッジのピンの間が割れています。



指板も割れてしまいます。



センターシームも開いています。



スケールとボディの間に隙間があります。ボディが変形して凹んでしまったのです。

この写真はバックですが、トップもバックも落ち込む事があります。ブレイシングの木が乾燥し過ぎて反ってしまった可能性があります。



せっかくオーダーし長く待ってギターが完成し、最初の年の冬にこうなってしまってはどうにももったいないです。特に海外からギターが来る場合には、外国人が日本に来て最初の年を過ごすと考えるが良いと思います。


外国から引っ越してきて環境が変わった最初の年は体がついていかず、特に寒いと感じる場合もあります。ギターも同じで気温と湿度が比較的高い地域で作られたものを日本の気温も湿度も低い地域に来るには急激ではダメなのです。必ず少しずつ慣らして行く必要があります。


高級ギターを購入して最初にすべきことは温湿度計を購入する事です。そして、24時間365日、気温22-25度、湿度45-55%に維持します。



エアーズ事務所には加湿器と除湿機がそれぞれ2台あり、1年を通じてこの温度湿度に近い状態になっています。



稀に「私は湿度50%を保っていたのにギターのトップが変形した」という方もおられます。その理由を説明いたします。それが実は相対湿度と絶対湿度の理解から来るのです。


湿度計が表示しているものは相対湿度です。まずはこれを覚えておいてくださいませ。


学校で「飽和水蒸気量」というのを習ったのを覚えているでしょうか? この理解が非常に重要なのです。空気は温度が上がればそれだけ多くの水分を蓄えられるのです。


より詳しくはウェザーニュースさんの記事をご覧ください。



この記事の中で絶対湿度早見表が見られます。


相対湿度が50%でも、もし気温が10度なら空気中には4.7gの水分しかありません。

それに対して、同じ湿度50%で気温が23度の場合は10.3gとなります。


つまり気温が低いと湿度50%をキープしてもあまり意味がないのです。必ず温度と湿度の両方を管理する必要があります。

上の写真のギターは冬に暖房のない場所で保管されたため、気温が低くなり過ぎて絶対湿度が不足した結果、乾燥し過ぎた可哀想なギターなのです。



マーチンのカスタムの説明書にはこの点が記されています。



やはり気温22-25度(記載は華氏72-77度)、湿度45-55%とあります。


結論として気温が低過ぎる場合にはギターが変形する可能性があります。

冬場にギターを外に持ち出すには必ず湿度を補うようなグッズを併用します。




また、もし100万円以上のギターをお持ちなら、こういう方法を検討する価値があります。




しかし、もし不幸にも最初の写真のようにギターが過乾燥で変形した場合には、以下の方法も試してみてください。


最初に部屋の温度と湿度を管理します。24時間365日、室温22-25度、湿度45-55%に維持します。


その上で特に加湿が必要なギターには、濡らした新聞紙丸めたものを乾いた新聞紙で包んでボールを作ります。

それをサウンドホール内に入れて、ハードケースで1週間ほど様子を見ます。


先ほどの写真のような指板の割れなども1週間後のにはパッと見わからないほどになります。




温度と湿度を管理する大切さがわかっていただけたでしょうか?

ぜひ温度湿度管理をしっかりして、長くギターを楽しんでくださいませ。

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